issue-05

ホテルのお風呂は最悪だった。バスタブとトイレが同じでとても狭い。シャワーも40度とは思えない高温で襲いかかってきて溜息が出た。デカルブに留学中、冬の寮ではあったかいお湯のシャワーが出なかった。冷たいシャワーをとっても寒い時間の中毎日浴びたことを、ふと思い出した。今はまるで逆だった。ひと通り洗い終えた時、湯船にはくるぶし位の高さまで水が溜まっていた。ここも水はけが悪いのか。リコちゃん家の手洗い場もよく水が溜まっていた。”湯船にね〜溜まっとるね〜お湯を早く抜きたい時は手をこうやってぐるぐるしたら早くなくなるんだよ”と得意げに話していたことを思い出して、やろうかと思ったが一人で何しているのかという気持ちになりそうだったので。放置して湯気で曇ったバスルームを出た。泊まり先にはパジャマを持っていかない主義で、いつも備え付けのしょぼいガウンを着る。日本のホテルにあるガウンの多くはおれには小さい。ここにあるのもとても小さく、変にガタイが良い人に見えた。荷物も少ない方だ。しかし物が大好きで自分の部屋には沢山のガラクタやエフェクターで溢れかえっている。車の中も後部座席に人が座るスペースが無いくらいに、物で溢れかえっている。そういった自分の空間以外は極力ミニマリストでいたい。そこではジーンズのポッケに入るモノだけを持ち歩きたい。右のケツポケットに折りたたみ財布を入れるのでいつも右のケツポケットは気づけば穴が空いている。荷物は煩わしい。まだ咳は止まらない。咳しちゃダメだよという忠告を無視して誰もいない部屋の中自分の咳とよく分からんテレビの音声がこだましていく。