issue-98

リコがまだ寝ていて暇なのでエイジの新譜について語ろうと思う。

 

 

さっきTwitterで清水エイスケが言ってたのは"このアルバムはAge Factoryとしての前半期の記憶の全てだ。"だった。

 

 

前作GOLDではシンガロングを多用してシャウトを通し、まるで音で殴っていく様な感じだったのが一転、抒情的で幽玄なサウンドが揺れる今作のアルバム。

 

去年の夏に配信シングルとして3曲を連続リリースした時、清水エイスケは"HIGH WAY BEACH"は初めて出来たアンセムだ。と言っていて次のアルバムのコアはこの曲になると言っていた。

 

実際ドラスティックな変化をこのアルバムで遂げている。

 

これまでの"WORLD IS MINE"のような傍若無人で叩きつけるサウンドの次の境地としても取れる"Kill Me"や"Easy"ではよく言えば実験的で新しい境地であり、ハードコア・パンクとしての要素はより鋭くなっている。しかし、悪く言えば実験でやってみよーくらいな感じで手を抜いた感もある。"CLOSE EYE"ではヒップホップの要素を新たに取り入れていて、個人的にはこの曲のドラムのリズムがあえて変わっていないところの違和感が好きだ。

 

 

"Dance all night my friend"の突き抜けるようなサウンドとドライブ感は"HIGH WAY BEACH"のフューチャー的な要素のその先や、平行線上にあり、ポップパンクの匂いも感じ取れる。ローファイでチープなサウンドから始まる"Merry go round"では日本っぽい曲でありながらバックで流れるギターのアルペジオはUSオルタナインディーを昇華させたサウンドでもあり、この曲で歌われている"ルート24"は奈良に通る国道24号線のことで地元民として思い入れの強い一曲になった。そう言った意味では"Peace"でも学研都市、海のない街といった奈良が謳われている。この曲は神曲と言っても過言ではない。タールの重いタバコの様だが、その空間の中でタタッとなるドラムの音共に目を瞑り歌詞から想像する景色はとても綺麗だ。

 

"Everynight"はアルバムのラストパートであり、このアルバムを通して清水エイスケが見ていた景色の集大成とも言える。廻り続ける退屈な日々に、あの日あの時あの瞬間に過ぎ去った刹那の煌めきを永遠に胸の中で灯し続けるためにこのアルバムは存在していると言わんばかりに。そして"1994"で一気に蒼くゆらゆら燃えていた炎を高め、もう、このアルバムが終わってしまうんだという気持ちと共にその先へ連れていってくれる1分35秒。

 

 

"nothing anymore"で前半の清水エイスケが弾くアルペジオにオケが入り、そこからサビに入るドラムのテンポが違うところは今までのAge Factoryっぽい曲展開でシンプに力強く、それと同時に儚いところがグッドだ。

 

 

 

アルバムとしてはTwenty one pilotsのTrenchというアルバムの様にアルバムとしてのコンセプト、世界観がしっかりと示されているなと思った。いつもエイジの新譜はヤバイが今回は特にヤバイ。

 

何よりボーカリストとしての表現力の振れ幅が凄く、歌詞から容易にその情景を想像できるリリック、既視感、ノスタルジック感は安定している。

 

 

今作も超クールでロマンチックなアルバムだ。