issue-07

両国の改札を出ると電車に乗る少し前に降り出した雨が止み、夕方四時半街のチャイムがなった。東京では夕方五時のサイレンじゃないのかと感じた。ここで育った人に”TONBO”の歌詞は書けない。スカイツリーを目指し、両国から歩く。東京感をもっと感じられると思っていた。でも全く感じることは出来なかった。新宿スワンの舞台、新宿でも京都感しか感じなかった。ほんの一瞬だけ秀輔さんがどうして予想通りのシティボーイじゃないのかが分かった様な気がした。でもやはり都会の人はせわしない。何かに追われているように、また何かから逃げるように早足で皆同じ方向を目指し歩いていた。早く奈良に帰りたい。ホームタウンは大事だと思う。東京で一つだけ、好きな建物がある。それは黄金に煌めくウンコだ。スカイツリーが威風堂々とこの時代を象徴するかのような冷たい色味を帯び、そびえ立つ中、あの名前も分からない金色のウンコはビルのてっぺんでアイツもまた堂々と君臨していた。コンジキのウンコに太陽の光が反射して後ろのビルにはメラメラとウンコがより輝いて燃えていた。無機質な塊が沢山存在する東京でアイツだけは違った。どこかダサくて、カッコ悪いけどなんだかこの街ではカッコよく見えるところが好きだ。東京タワーは見なかった。でも、スカイツリーより東京タワーの方が人情味が感じられて好きだ。そして東京タワーは無骨で男らしいとも思う。

 

浅草を散歩しながら昔行った、旧式のパチンコや、射的のあるお店はまだあるのか気になったが急いでいたので行くことは出来なかった。電車に乗りたかったが何線とか、どこに止まるとか何にも分からなかったので隅田川をひたすら前に進み浅草から両国をまた戻った。途中、数多のトビウオが水面から空に向かって飛んでいた。反対を見ると壁に這うように芸術的とも言えるホームレスのビニールシートハウスがポツポツと建っていた。最近買ったテントと同じくらいのクオリティでリスペクトした。もしもホームレスになったとしても楽しんで何でもやれたら良いなと思った。ケイゴは今日も走り回っているらしく東京では会えなかった。東京には出たないわ。って言うと、おれはこっちかも。と言っていた。複雑な気持ちになった。キャリアを高めるためには東京に出た方が良いのかもしれない。でも彼女はどうするんやろうとか、東京での生活費、疲れた顔をしたサラリーマンで溢れかえる満員電車とか現実味っぽいことを考えるととても良い気分じゃなかった。洋さんは昔から東京出張から帰ると芋ようかんを買って帰ってくる。甘いのは好きじゃないけど、どうしてかアレはたまに食べたくなる。今日はおれが買って帰ろうと思い買った。お土産を買う洋さんの姿を想像すると何だか照れ臭い気持ちになった。帰る時、何を想いながら帰るのかも知りたくなった。

 

上京組には全然会えず寂しかった。オリンピック会館で音楽サークルの発表会的なことがあったタケワはスーツを着て忙しそうにしていて3分も一緒に話せなかった。寂しそうな顔をしていたが、年に何回か会ってるのでこっちはそこまで寂しくなかった。バンドのメンバーもバイトで会えず、兄さんに至っては今日が一番会える日やったのにも関わらず朝に送ったLINEは一切帰ってこなかった。みんなこっちのせわしない暮らしに追われているのかもしれない。し、そういった日々から毎日逃げるのに忙しいのかもしれない。そう考えると早くあくびをしながらラキストを歩きながら吸える奈良に帰りたくなった。

 

両国の江戸沢という鍋屋でちゃんこ鍋を食べたが、美味しいのか普通なのかイマイチよく分からなかった。本店の方を予約していて駅のすぐ前にあるのは別店だった。思いっきり駅前の別店に入ったところ、お客様は本館です。と言われ恥ずかしかった。駅前の方、予約しといてやと思った。他人に予約してもらっておきながら、文句をいう権利もないなと思ったがやはり、近ければ近い程嬉しかった。東京駅に行く途中、美味しい鍋ってなんなんやろとも思った。まだ美味しい鍋の答えが自分の中で見つかっていない。

 

新大阪に着くのは22:50で今から約2時間もある。2時間半で大阪から東京に行けることは凄いと思うが、2時間半という時間はやはり長い。運転する2時間半は長くないのにな〜と思う。よく特急の上の棚にお土産を買って忘れていくことがある今回はしっかりもって帰ろう。奈良を目指し今日奈良でワンマンライブをしているAge Factory の”TONBO”をさっきまでの曲よりボリュームを2つ上げ、聞きながら再び今日は1つ向こうの3号車にある喫煙ルームを目指す。今日はすいていて欲しいと願った。