issue-09

あと一杯食べたいなと思った。最近、リコちゃんからご飯を作ってあげたくないと言われた。理由は”美味しい”と言わないからだった。二人の味の好みはバッチリとは言えない。でも、今日の親子丼はとても美味しかった、もうちょっと砂糖を入れたかったな〜と言っていたがおれにはアレでベストオブベストだと感じた。おれはご飯を三合炊いた。ちゃんとした正式な米の炊き方をリコちゃんと付き合ってから教わった。家で家事の手伝いをしてこなかったおれは米の炊き方の基本も知らなかった。最近慣れてきたなと思い、これでどう?と言わんばかりのドヤ顔で隣を見ると、まだ洗いたりてないよ、米結構こぼしてますね。と言われた。まだまだだった。

 

二人で万代に食材を買いに行く時間も好きだ。あ〜これが当たり前になる日が来るんだなと思いながら、レジ袋に玉ねぎや、他に買った物を詰め込んでいると、屈託のない笑顔で、いれるの下手くそだな〜と笑っていた。

 

一緒にいる時間が増えていくのに伴って、おれの家事力も上がっていく。最近は靴下を裏返しに脱がなくなったし、今日もバスタオルをたたんであげた。でも莉子はいつも脱ぎっぱなしにして置いて帰った服も洗濯してくれるし、ご飯も作ってくれる。おれが食器洗うよと言い、洗った後のお箸に汚れがまだ付いていても可愛いと思った。と言ってくれる、それなのにご飯をつくってもらって”美味しい”と言わなかったこと、もう作ってあげたくないと言わせたことの大きさに気づいた。

 

当たり前に思える全てのことは当たり前じゃない。簡単に分かることだ。でもふとしたときに立ち止まり周りの環境の有難さ、人の温かさ、友達、家族、莉子の大切さを見つめ直すべきだと感じた。それが出来るか出来ないかで大きく人生は変わるんだと思う。

 

味噌汁は少ししょっぱかった。おれは濃い味が好きだ。でも味噌汁は少しだけ、しょっぱいと感じた。そのしょっぱさが心に染みて、あの子の分の味噌汁も飲んだ。

 

次はおれが親子丼を作ってあげると約束した。まだ半年も一緒にいない、でもこれからも一緒にいるんだと思う。しっかり好きだと書いていて強く感じる。いつもありがとう。

 

The Amazonsの”Stay With Me”を大音量で聴いた。